世界初!「麻雀マット」の発明!
株式会社ミワックス(当時 美馬製作所)の創業者である美馬利吉は 大阪船場での丁稚奉公時代に麻雀を覚えた。
戦前はもちろん、戦後まもなくの頃は大阪界隈の麻雀人口はそんなに多くなかった。牌などの用具が、そうどこにでもあるという時代ではない。だから、普及するはずもなかった。当時奉公先の吉田藤造商店には麻雀一式が揃っていて、社内で先輩たちが後輩たちに教えた。一度覚えると面白いからやめられない。数少ない同好者は誘い合って卓を囲んだ。奉公先の船場を離れ、独立した翌年の昭和22年頃から、誰からともなく声を掛け合うグループが周辺にできていた。中心になったのは、ある学校の先生だった。家業は自転車屋と旅館。食うには困らないから早々に先生を辞め、毎晩のように同好の友に誘いをかけてきた。四人が揃うと、上汐2丁目(当時)の元先生の家の奥座敷に集まって「チー」「ポン」がはじまる。夜な夜な通いつめる始末だった。
そのころ麻雀といえば、コタツ天板やテーブルに毛布をかけ、その上で牌をかきまぜては並べた。
とても大きな音がする。毛布がズレたり、動いたりすると牌がひっくり返る。自社でゴム製デスクマットの加工、製造を手掛けるようになっていたので、卓を囲むたびに何かもっと便利な麻雀用のテーブルがつくれないものか、と考えるようになった。
卓上で牌をかきまぜる音を小さくするために、ゴム製のデスクマットの弾力性を活用してはどうだろう?表面の滑りを良くするために、布を張ってはどうだろう?牌を並べるのに周りに枠があれば牌がこぼれないし、並べるのに便利じゃないか?
機械いじり、モノ作りのムシがここでもまた頭をもたげる。とにかく試作品を作るぞ!となるのは必然だった。
75センチ四方のゴムマットにグレーの布を貼ってみた。さらに周りに枠を取り付ける。
そこまでは簡単に思いついたものの、ことはそううまく運ばない。ゴムマットに布の貼り付けがなじまない。
接着剤の調整に四苦八苦した。ゴム製のマットにゴムの出っ張りをつくる枠の取り付けもまた難題だった。しかし、そこは生来身につけたモノ作りへの好奇心とゴム製品作りの経験から生まれたアイデアが見事に解いてくれた。麻雀マットの発明は、こうして完成にこぎつけた。昭和29年のことである。
(左から2人目 美馬利吉) 美馬製作所前にて 筋肉質のええ体してます!
遊びながら、必要に迫られて創り出した自信作だったが、売れなくては苦労のしがいがない。
いざ売るとなると、文具類の販売ルートにこそ詳しいものの、家具か遊戯具に属する麻雀用品を売るきっかけはつかめない。初めて売り出す新製品だから、売るほうにも戸惑いがある。ましてや、売り込む相手が麻雀を知らないとあっては、関心がないのも無理はない。大阪の大問屋に打診してみたが「売ってみよう」という返事は、いつまで待っても返ってこなかった。年が明けて昭和30年2月。東京なら何とかなるのではと考えて足を運ぶ。丸めた麻雀マット2本を手に新橋駅を降り、あてもなく飛び込みで何軒かの家具店に売り込んでみたが「こんなもの売れません」と相手にされない。仕方なく、かねてから得意先だった文具商を訪ねてみると「念のため1本置いてけ」となった。
まったく販売の確約がとれないまま、なかば諦めて大阪に引き揚げると、翌日に思わぬ反応があった。「念のため置いてけ」といわれた文具商からの電話連絡だった。この文具商には、麻雀仲間で三越百貨店の人が出入りしていた。麻雀マットの話を取り次いだところ「面白い。話を聞いてみよう。」ということとなったのだという。すぐに商談は進んだ。「どこかと契約しているか?」「してまへん」「専売契約にしてくれないか?」というので、値段の交渉に入る。800円から850円を希望したが、仕入れ値が800円を超えるこの種の商品には20%の税金がかかるという。結局、輸送費別の750円で商談はまとまった。他へどこにも売らないという1年間の専売契約で、三越は「麻雀マット」を1,500円で売り出すこととなる。
昭和30年5月、東京・日本橋の三越百貨店の家具売り場に、世界で初めて10枚の麻雀マットが並んだ。
朝10時の開店で、午後2時には売り切れた。すぐに「作れるだけ作ってほしい!!」と急ぎの注文がきた。
空前の爆発ヒット。
三越との専売契約切れののち、待ちかねたかのように全国百貨店への販路が瞬く間に拡がった。
麻雀ブームも相まって日本中で麻雀マットが飛ぶように売れた。
世界初の麻雀マットは美馬製作所にとって初のヒット商品となった。
美馬利吉36歳のころであった。
<あとがき>
麻雀は中国発祥のゲームなので、麻雀マットも中国由来の製品と思っているひとも多いのではないでしょうか?
実は大阪上本町の麻雀好きのゴム製作所のおっさんが、夜な夜な「ガチャガチャうっせーわ」とか言われたり、牌倒れてめんどくせぇ!ってなところから考案されました。
時代背景もありますが、うるせーだの、めんどくせーだのがなければ日本中で使われる「麻雀マット」というものがこの世に生まれていなかったかもしれない、、と考えると。
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URL: https://www.miwax.co.jp/products/mahjong/tonc-mat.html
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